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第268話 

彼女は静かに自分に言い聞かせた。

「松本若子、大丈夫だよ。あなたはただ一人の男性を愛してしまっただけなんだから」

人を愛するのに、必ずしもその人を手に入れる必要はない。

彼が幸せでいてくれさえすれば、それで十分じゃないか?こうやって、たとえいろいろな辛いことがあったとしても、少なくとも、彼らは泥沼にまでは至らなかった。

修が以前、どれだけひどかったとしても、彼はおばあちゃんに叱られ、きつく罰を受けた。

人を愛するのはつらいけれど、人を憎むのはもっとつらい。

彼女はもう、愛したくも憎みたくもなかった。

その時、スマホが「ピン」と鳴った。

若子は手を伸ばしてスマホを取り、急いでマナーモードに切り替えた。

遠藤西也からのメッセージだった。

【まだ起きてる?】

松本若子:【まだ寝てないよ、ちょうど横になったところ。何か用?】

藤沢修が目を開けると、若子がスマホを手にして誰かとメッセージをやり取りしているのが見えた。その目つきが少し暗くなる。

こんな時間に、誰が彼女にメッセージを送っているのだろう?

遠藤西也:【花が君のラインを追加したいって言ってきてるんだ】

松本若子:【どうして?何か用事があるの?】

遠藤西也:【いや、特に用事はないみたい。ただ、単純に追加したいって。それで、君に一応確認しておきたくて】

若子は少し考えてから返信した:【大丈夫だよ。彼女が追加したいなら教えてもらって構わないよ】

遠藤西也は、自分の意見を尊重してくれる。誰かが彼女のラインを追加したいときも、まず確認してくれるところが本当に…

彼女はちらりと藤沢修を見た。彼は目を閉じており、眠っているように見えた。

まあ、比べるのはやめよう。人それぞれ違うんだから、比較なんて意味がない。無理に比べると、かえって自分が小さく見えてしまうだけだ。

遠藤西也:【わかったよ。じゃあ、君のラインを教えるね。でも、彼女が何か不愉快なことを言ってきたら気にするなよ。無視するか、俺に言ってくれれば、あの小娘を叱ってやるから】

若子は淡く微笑んで返信した:【大丈夫だよ。花さんはいい人だし、悪気はないから】

遠藤西也:【そうやって褒めると、あの子は調子に乗るから、絶対本人には言うなよ。すぐに鼻にかけるからさ】

松本若子:【了解。でもね、お兄さんなんだから、少し優しくしてあげたら?兄
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